歯の神経を取ることのメリット・デメリット
2017.03.19
院長です。
歯の神経(専門用語で歯髄といいます)ってどこにあるのでしょうか。
歯の神経はどの歯も歯の中央付近にあります。それを象牙質という歯の大部分を構成している硬い組織が覆い、さらに私たちが見える面にはエナメル質という非常に硬い組織構造で守られています。
神経を取る場面で一般的に多いのが虫歯です。進行してしまい痛みなどの症状がでた場合ですね。神経を取ってしまえば痛みもなくなりますし、しみるようなことはありません。しかし、これは痛みを取り除くため仕方なく行う治療法で、神経を取ること自体は歯にとっては非常によくないことなのです。
神経を取った場合のメリット・デメリットを挙げてみます。
【メリット】
・冷たいものや熱いものがしみない
【デメリット】
・強度の低下
・歯の色が黒ずむ
・再度虫歯になっても気づきにくい
・神経を取った隙間からばい菌が入って化膿する可能性がある
メリットは知覚を感じ取る神経がないのですから、冷たいものや熱いものがしみるようなことはありません。一方デメリットでは、神経を取る際一緒にある毛細血管も摂ってしまうため、歯の栄養供給がストップしてしまうことです。それにより、歯の新陳代謝がなくなり徐々に強度が低下していきます。また、同じ理由から徐々に白色から黒ずんだ色に変化していきます。神経を取って治療をしても管理(歯磨き)次第ではまた虫歯になってしまいます。神経がないとしみる、痛いなどの知覚を感じないため、虫歯が相当進んでも気づかないこともよくあります(神経を取って被せた歯でも虫歯になります)神経を取ったあとにはお薬を詰めて密封しますが、微細な隙間があったりするとそこからばい菌が歯の内部に侵入し、根の先端で増殖し腫れたり痛みがでてしまうことがあります。
【神経を取ってしまった後のトラブ解決法は?】
歯の黒ずみはホワイトニングや差し歯を施すことで解決します。虫歯になっても気づきにくいに対しては適切なブラッシングと歯科医院でのメンテナンス。神経を取った隙間からばい菌が入ってしまった場合には再治療でばい菌を除去する。強度の低下はコア(土台)を歯の中に入れ補強します。素材は金属、プラスチック、グラスファイバーなどがあります。
【神経を取った歯は歯が割れる可能性が高くなる】
通常神経を取った後は、コアで補強しさらにクラウン(被せもの)で覆い強度が落ちることをカバーします。もちろんそれで何十年も長持ちする歯もありますが、噛む力に耐えられなくなり割れてしまう歯も多いのも事実です。割れ方によっては残せる場合もありますが、一般的には抜歯に至るケースがほとんどです。これは歯への栄養供給の問題もありますが、虫歯で歯をかなり削っている場合や根管治療などで根管(歯の内部)が薄くなっている場合は、神経のある歯と比べても強度が落ち割れやすくなります。また、メタルコアという保険治療ではメジャーな金属製の土台(歯の補強のために使用します)が歯の強度よりも勝り、それが楔の作用で割れてしまうことも臨床上よく見かけます。
【神経を取った歯は枯れた木と同じ】
神経を取ってしまった歯は、枯れた木に例えるとわかりやすいかもしれません。枯れてもすぐには倒れませんが、栄養が供給されないので枝は折れやすくなります。そして時間が経てば経つほど強度は落ちていきます(勿論木の種類にもよりますし、建材として使用される木は栄養供給がありませんが、使い方を工夫するので長持ちはします)生きている木は新陳代謝があるので、適度なしなりと強度がありなかなか折ろうとしても折れません。歯にも同じことが言えます。歯の寿命をできるだけ伸ばしたいのであれば、神経を取らない方がよいのです。
【歯が割れてしまったら?】
歯が割れてしまうとほとんどのケースで抜歯になります(割れ目からばい菌が入り感染を起こすため)そのあとはブリッジ、入れ歯、インプラントの治療をしなければなりません。ですので、歯のため=患者様のためにはできるだけ神経を取らない方が長い目で見て良いのです。
※歯の強度には個人差があります。神経を取った歯に必ずトラブルが起きるとは限りません。神経がある歯でも割れて抜歯に至るケースもありますし、神経を取っても30年以上普通に使用されている歯もあります。私の臨床経験上割れる歯は圧倒的に神経を取った歯に多いです。その他割れる要因として、かみ合わせや、咬み方、咬む力、咬むものの硬さ等、習癖(はぎしり、くいしばり等)、被せものや土台の素材でも変わってきます。
神奈川県大和市柳橋の歯医者 こころ歯科大和クリニックではできるだけ神経を取らないよう努力して治療しています。